東京都市町村職員研修所
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小川 洋平 講師
<研修のエッセンス>係長の役割 【その1】「今、係長は期待されている」
<研修のエッセンス>係長の役割 【その2】「係長ってどんな役割?」

係長の役割【その1】 「今、係長は期待されている」
◆係長が期待される訳

 2000年の自治法の大改正(地方分権一括法の施行)を一大エポックとした地方分権の進展へ向けた動きは、行政システム全体を対象にして大きな変革を招来させつつあります。一瞥 するだけでも、特色ある自治体の創設、そのための地方財政の強化・財源制度改正要求、市町村合併の促進の主張、公務員制度改革等々枚挙に暇がありません。

 地方自治が一層の進展を図るための要因を探すなら、その主体である住民関係を筆頭に幾つも数え上げられますが、その中で一方の核は紛れもなく行政です。そして、その遂行組織の構 成者たる私たち地方公務員です。分権が進む中、住民の意識の高まりとそこに生じるニーズの多様化は、今日の自治体を取り巻く特徴的現象です。そこで行政には、期待される「高質な 住民福祉」を実現するため、従来に増してより一層効率的な運営が求められることになります。その結果、既存組織或いはそのシステムの変革要請、即ちその代表的なコンテンツである 「職員数の減少」を含めスリムな自治体を念頭に置いた地方公務員制度改革への圧力増強は、必然的帰結なのです。就中、業務執行の最小単位である「係」は、その運営の如何が事務成 果をストレートに左右するする位置におかれているという意味で、その在りようが注目されます。そして当然、このような状況の中で変容していかざるを得ない「係」を預かる「係長」 には、そのような多様で且つ難儀な要請に応えるため、従来にも増して高い知識、多くの能力・技能などの保持そして何よりも人間的魅力=「地方公務員が保持していなければならない センス」が期待されるわけです。

 そこで、上記のように今日の行政を取り巻く変動激しい状況の下において、係長中でも新任係長が「係長」として自立する事が不可欠です。そのために、彼等が自覚しなければならない 基本的な知識や保持すべき能力などを認識させ、職務遂行能力の向上さらに政策形成能力の育成を図る事が焦眉の急であります。そのような目的を達成しようと企図して行う研修が「係 長の役割」です。
 この研修は、いわゆる「JST(人事院式監督者研修)」方式を採用して実施します。 JST方式は、「会議式」で行われます。会議式研修とは、講師の司会の下に研修生同士または 研修生と講師の話し合いの形式で進めるものです。

 今日の研修スタイルは、講義式から参加型にシフトしていますが、その意味からもこの会議式は時宜に適っています。研修生は、この「会議」を通じて講師の行政の現状を正しく認識し た視点から発せられた発問を通じて、研修内容を修得していく事になります。即ち、自らが主体として参加する形式の研修方式の中で、リーダー(係長)として職場で当面している現実 の問題を互いに話し合うことなどを通じて現実の事象を整理・抽象化し、仕事の管理やメンバー(係員)の指導・監督などに関する基本及びその方法を、組織的、体系的に身に付けるこ とになります。

 このことにより、係長がまさに「今期待されている理由」を理論的に認識するわけです。
 【その2】へつづく

係長の役割【その2】 「係長ってどんな役割?」
◆リーダー(係長)の役割

 会議式の一番はじめの場面「第1会議」のテーマは「リーダーに求められるもの」です。変化の激しい、厳しい環境に直面している行政運営に際し、その組織の、それも最小単位である 「係」のリーダーは、どのような役割を担うべきか、また、どのような能力が期待されているかを考えるステージです。即ち、分権下でのリーダーの職務遂行能力及び政策形成能力の必要 性を意識させ、整理させることがここでの目標になります。

 多様な住民ニーズに応えるには、迅速な意思決定・機敏な対応ができる組織でなくてはなりません。そのためには出来るだけフラットでフレキシブルな組織形態が必要になります。しかし、 「自分(リーダー)が預かる「係」は、従来のままの「堅い組織」だから対応が出来ない。」というのでは責任回避です。新任といえども既にリーダーとなった彼等には、与えられた環境の もとで担任する仕事をやり遂げなければならない義務が生じていることは自明の事であって、その認識を持ってもらわなければなりません。

 そこで、「リーダーの基本的な役割」を以下に整理しておきましょう。
  @ 自ら組織のメンバーの一員としての自覚を持ち
  A メンバーを率いて仕事を進め(マネージメント・リーダーシップの発揮)、
  B 他のリーダーと連絡・協調を図らなければなりません(コミュニケーションの活用)。
  C また、自己啓発(リーダーシップの発揮・コミュニケーションの活用)に努め、
  D 社会情勢・経済環境を見つめて判断する能力を具備して、職務に主体的に取り組むこと
   (マネージメント)
 となります。以上の事項を討論を通じて指摘・自覚し、これらがその役割として求められることを確認してもらうこととなります。

 そして、そのための能力としてどんなものがあるのかを整理しておきます。
  @ 時代の動きを敏感につかむ能力(センス)
  A 前例にとらわれない判断力・思考の柔軟性
  B 新しい事業の目標や進め方を考える創造性
  C 変化に対応する機動性・迅速性
  D 事業実施に当たって経済性・効率性・有効性を常に意識する経営感覚
  E 高い倫理観の保持
 等となりましょう。現在、研修生(新任係長)自身が置かれている立場を振り返って討議し話し合い、その中からこれらの能力の必要性を発見し、気付いてもらって結論を得ます。

 ここまで見てきたように、このステージを通して係長として具備しなければならない能力・知識・技能等とは、具体的には、「マネージメント」「リーダーシップの発揮」「コミュニケー ションの活用」にあることに気付かせることができれば、この会議式研修が順調に滑り出したと言えます。